経団連のDXレポートを解説!いま企業が知っておきたいこと(第2章 企業DX 後編)
- 謙太 中村
- 2024年11月12日
- 読了時間: 9分
更新日:1月16日
本記事では前回に引き続き企業のDXについて解説していきます。
1.協創
社会全体でDXを促進すること。詳細は前回の記事を参照
2.経営
3. 人材
4. 組織
5. 技術
3. 人材
Society 5.0で示した通り、デジタルの知識を活用する力、論理的思考能力、
課題の発見・解決力、未来社会の構想・設計力等が必要となり、それらはいきなり身につく物ではありません。
初等教育からすべての段階で教育が必要とされています。
小学校の授業でプログラミングが必修化されたニュースは記憶に新しいことでしょう。

いずれかの能力が秀でた人だけでは実現できません。
自社内だけでなく人材を育成し社会全体を協創していくためにも、連携は欠かせないのです。
3-1. 人材像
DX推進には「新たな発想」、「グランドデザインの構想」、「収益の計画」、
出来上がった計画を「実行する力」が必要となりますが、それぞれ違う資質、能力が求められます。
その資質、能力を「起・承・転・結」に分けて整理してみましょう。
また、弊社の社内DX提案の事業を例に挙げ、併記いたします。
「起」
「0から1」を生む人。新たなアイディアを生み出す人のことを指します。
「承」
「起」を理解し、他の人が理解できるようにデザインし、拡散する人です。
「やってみたい」をビジネス構造として設計し、「1をN倍化」する役割を担います。
「転」
MECE分析などから事業計画を作成、KPIの設定によりリスクの低減、
「1をN倍化」することの効率化を図る人です。
「結」
「結」人材は「起・承・転」の方が確立した仕組みを実行する人たちです。
QCD(品質・コスト・納期)を意識・遵守しオペレーションをします。
◆弊社の事業に置き換えると
起:社内DXの推進を決意したお客様自身です。手段を知らずとも、
「元来のやり方を変えたい」と考えた時点で「起」の人材にあたります。
承:弊社の担う領域です。お客様の「変えたい」を承り、具体化します。
お客様が保有し、散在する事実に基づき、まず何を行うかを弊社が整理します。
転:お客様、弊社が協力して担う領域です。
「承」の結果からお客様自身によるKPI設定後、
実現方法、ツールの策定を弊社がより詳細な粒度でお話しいたします。
結:お客様自身が担う領域です。
DX後のビジネスを遂行していくご自身が、「結」であると認識してください。
「起・承」に必要な資質とは、 広い視野と「創造力」が豊富なことです。
「転・結」には、目配りできる観察眼、「実行力」が求められます。

いずれの人材も重要であり、各人材の特徴を理解して経営者が支援するとともに、「起・承」と「転・結」の繋がりをバックアップする仕組みが重要です。
急成長を遂げる企業は、夢を語る創業者(起承)、参謀と、実行する番頭(転結)が揃っていることが多く、成長するにつれ「転結」が中心に利益を上げる構造が出来上がります。
創業から時間が経つと、ビジネスの賞味期限が切れてしまうことが多くなりますが、
「起承」の人材が企業内に不足すると、新たな事業の軸を定めることができなくなります。
社外との協創を進めるという観点においても、
多くの人を巻き込み共有できる「承」の人材が鍵を握っています。
DX によって社会や産業の構造が大きく変わりつつある今、
新たな価値の軸を生み出す「起承」人材をいかに育てるかが大きな課題です。

3-2. 人材活用
「起承転結」モデルのように、多様な人材が存在し、特性や果たすべき役割は異なります。
人材を一律に処遇するのではなく、多様な人事・雇用制度をとることが欠かせません。
とりわけ「起承」人材をどう評価し活用していくかについてが各企業に求められています。
「起」の人材は型にはめた扱いが難しく、従来型の企業ではこれまで活躍の場が与えられませんでしたが、今まさに「起承」の人材が必要であり、希少な存在となっています。
一方で、スタートアップを中心に「転結」側のオペレーション経験が浅い企業もあります。
不足している役割の人材を発掘・育成し、「起承転結」を揃える視点が重要です。
社内で人材を揃えることが難しい場合には外部人材の活用が有効です。
人材の流動性を高めるとともに、兼業・副業を拡大するほか、複数企業で活躍の場を持たせる新たな人材活用の仕組みも必要となるでしょう。
「転結」が多く「起承」が少ない企業においては、「承」人材の採用・育成が急務です。
「転結」を経験した人材が「承」へ移動することも考えられます。

プログラムを組み育成を図るとともに、「出島」や海外拠点などでの勤務を経験させて、世界の多様な文化や価値観に触れさせ、協創できる人材へと育成する視点が必要です。
4. 組織
事業を刷新するには「組織文化」と「組織体制」を併せて変革することが重要です。
4-1. 組織文化
Society 5.0 時代の源泉は多様な人々の想像力・創造力で、最も重要な組織文化は「多様性」の受容と活用にあります。
これまでの日本企業は、新卒一括採用と終身雇用によりきわめて同質性が高いものです。
同質性の高い組織は変化の察知と対応が遅れ、状況の変化に抵抗を示す傾向が強いと言われます。
変革を拒む組織文化での企業変革は難しく、DX 推進のために組織文化の改革は重要な要素となります。
大きな方向性としては、計画遵守から試行錯誤へ、失敗忌避から挑戦奨励へ、
伝統から革新へ、前例踏襲から創造的破壊へ、自前主義から協創へと、
多様化を前提として組織文化を変革する必要があります。

ただし、計画や管理も欠かせない要素であるため、既存領域との相互理解が重要です。
異なる領域間の相互理解を深めるためには、組織内のタスク型ダイバーシティ(能力・経験・知識など、目に見えない実力の多様性)を確保すべきです。
組織文化を変えるには、経営ビジョンの明確化と共有が何よりも重要であり、経営層からの発信や社内研修などを繰り返すことが必要です。
こうした経営層のリーダーシップで根付かせる組織文化もある一方で、個人やチームの主体性や多様性に基づいてボトムアップで文化を形成する視点も重要です。
4-2. 組織体制
前回の「経営」で示した通り、DX 推進に向けて、組織体制についてさまざまな形態が多くの企業で形成されつつあります。
DX を推進する具体的な組織と特徴を以下に示します。
経営企画部門・社長室
経営層直轄で DX 室等を立ち上げ、経営戦略と合わせて全社的に変革する
デジタル・システム部門
既存の事業部門
部門横断プロジェクトチーム
出島型組織
経営ビジョンに基づき変革を進めるうえで自社に足りない視点を認識し、
どのような体制が必要で、どの部門が DX を主導し、どのように全社に展開するかを検討したうえで、実行することが肝要です。
組織内の理論のみで変革を起こすことは難しく、出島型組織に限らず、あらゆる組織が内外との協創を前提とすることが望ましいです。
DX を進めるに当たり重要となるのは、経営層の関与の仕組みです。
経営層と新規部門の関わり方として、「トップダウン型」「ボトム アップ型」「ハイブリッド型」という仕組みに分けられます。
トップダウン型
経営層がリーダーシップを発揮し、事業テーマを決定し、指名・指示する仕組み。
ボトム アップ型
ボトムアップ型は、現場からの提案をもとに大きな変革へと展開する仕組み。
ハイブリッド型
トップダウン、ボトムアップを組み合わせながら進める仕組み。

変革においては評価制度等も柔軟に変える必要がありますが、既存組織を完全に切り離すことはあってはなりません。新たな取り組みを既存組織側で受け取るキャッチャー機能も欠かせないのです。
5. 技術
DXを推進するための最後の要素として「技術」は欠かせません。
5-1. 技術要素
最新の技術動向に注力しつつ、確実に DX を実装する実力が必須となります。
代表的な技術要素として、経団連では以下を定義されています。
AI-Ready
AI機能の情報システムへの組み込み
Cloud-Ready
パブリッククラウド環境での構築・運用の常識化
Agile-Ready
開発スタイルの抜本的な改革
LX-Ready
現行システムの構造変革(Legacy Transformation)
いずれも日本の企業にはなかなか浸透せず、DX 推進の足枷になっているとされています。
ユーザー企業のIT部門が、一定レベルのデジタル・IT 技術力を復権させることが、DX 加速の鍵となるのです。
5-2. LX(Legacy Transformation)
DX を推進していくと、現行システムの課題に直面することが多々あります。
対応スピードやコスト負荷、最新ソリューションと現行システムとの連動、IT 人材不足などが代表的です。
DX を推進するための LX(Legacy Transformation)の同時並行での遂行が、多くの企業で急務となっています。
LXが必要な理由を以下に挙げます。
①商品・サービスの質的変化に対応できない
企業単体ではなく協創により商品やサービスを提供する場合、現行システム の複数の機能を再結合するなどの対応が必要となり、技術的な限界がある
②スピード・コストがニーズに合わない
③IT 環境としての老朽化に対応できない
①②はビジネスを変革した場合にシステムがついていけず、入力・管理に時間が割かれる等により利益を最大化できない要因となりえます。
③は環境の維持ができなくなったタイミングでビジネス自体が滞る可能性を孕みます。
5-3. データの協創
協創促進のためには、接続可能で自立分散型のアーキテクチャを共通インフラとして整備するとともに、データ相互利用における阻害要因を回避するために、流通・連携させるデータの品質を定義し、協創参加の際はそれをクリアしていることが重要といえます。

6. まとめ
「協創」「経営」「人材」「組織」「技術」という観点を示しましたが、
「協創」ができているかを自己診断いただくための資料が経団連から提供されています。
まずは自己の組織がどの位置なのかをご認識いただくことが大切です。

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