経団連のDXレポートを解説!いま企業が知っておきたいこと(第1章 産業構造DX)
- 弦哉 立花
- 2024年11月12日
- 読了時間: 7分
更新日:1月16日
目次
1. デジタル・データによる変化
DX のデジタル時代へ——。これまでの時代からの変化を解説します。
2. DX の定義
3. Society 5.0 時代の産業
4. 海外の DX の状況
5. 日本における DX
6. 産業構造の転換
7. まとめ
*本記事は一般社団法人 日本経済団体連合会の Digital Transformation (DX) をもとに執筆しています
1. デジタル・データによる変化
現在は、デジタル技術の進展によりデータの収集や伝送、蓄積、分析を低コストで大規模に行えるようになりました。その結果、データによって可視化された経営課題や社会課題を 効率よく解決できるようになり、さらにそれらの解決法を瞬時に世界に共有できるようになっています。
また、それらの技術や解決策を応用することで、生活者の多様な価値を満たすことも可能になってきています。
これに伴って、世の中のビジネスモデルも大きく変わっています。 ひと昔前とは違い、モノを所有するのではなく「シェアリング」という形で利用することもできるようになりました。他にも「サブスクリプション」などの言葉も聞き馴染みがあるのではないでしょうか。 これらから分かることは、「社会の価値基準や物差しが変わりつつある」ということです。実物から体験へ、所有から共有へ、大量消費から循環へといったパラダイムシフトが起きており、昔のように「普通のモノを安く作れば売れる」という時代は終わりました。 こうした変化は、技術の変化にとどまらない、社会基盤そのものの変化と言えます。企業はこの変化に俊敏に対応できなければ、事業や企業自体の存続が危うくなるという危険性をはらんでいます。

そういった変化に対応していくための一つの手段が DX だと言われているのです。
2. DX の定義
では、そもそも DX とは何なのでしょうか。
経団連が提唱している「Society 5.0」という考え方があり、その中でデジタルトランスフォーメーション(DX)を「デジタル技術とデータの活用が進むことによって、社会・産業・生活のあり方が根本から革命的に変わること。また、その革新に向けて産業・組織・個人が大転換を図ること」と定義しています。

DX は、社会やビジネスの根幹を揺るがす問題であるとまで書かれています。
企業としては、経営の最重要課題として取り組むべきものであり、決して一時のブームや目先の対応、IT部門への丸投げで終わらせて良い問題ではないでしょう。
また、従来から企業が導入してきた、デジタル技術や機械を用いた単純な自動化・効率化はDX とは言い難いとされています。社会の根本的な変化に対して、時に既成概念を疑いながら新たな価値を創出するための改革こそ、DX と呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。

ただし、気を付けなければならないのは、DX はあくまで手段であり、それ自体が目的化してはいけないということです。
3. Society 5.0 時代の産業
時代が変わるにつれて、産業の主体が変わってきました。
工業産業の時代では「形のある製品」、情報産業の時代では「サービスや情報」が産業の主体となっています。
工業産業の時代では製品の質が価値に直結しましたが、現在は「製品やサービスを高品質・ 低コストで販売すれば必ず売れる」という時代ではありません。
これからの時代は、産業の起点が「生活者の体験価値」になると言われています。
企業がなぜその事業を営むのか、どのようなストーリーがあり、どのような夢を実現でき、何が楽しいのかといった生活者の価値や信念が起点となり、産業が形成されていくでしょう。
そのためには、人間を単に「消費者」として捉えるのではなく、多様化した社会の中で主体性を持って生きる「生活者」として捉えることが大切です。
また、今後は「〇〇業」という業種の区分は、あまり意味を持たないものになるのではないかと言われています。
人々が求める価値は多様で、いかにそれを満たすかが重要となるからです。人々の多様な価値観にコミットしていくようになると、さまざまな産業にグラデーションが生まれ、業種の隔たりは薄れていきます。
やがては、単一の製品だけでそれらを満たすのは困難となって、車ではなく「移動」、薬ではなく「健康」などといった視点で価値を見出す人が増え、それらの価値観に合わせた産業を創出していくことが重要です。

そこで活用できそうなのが DX なのです。
4. 海外の DX の状況
では、DX が進展しているとされる海外では、どのように DX が展開されているのでしょうか。

米国では、民間企業が多種多様で革新的なサービスを提供し、個人のデータを独占的にあまねく集め、さらなる価値を提供することで大きく成長を遂げていいます。
近年増えてきているクラウド型の営業支援システムや顧客管理システムなどは、比較的分かりやすい例でしょう。代表的なものとして、営業支援システムの Salesforce などが挙げられます。
一方で、古い産業が DX を取り入れて競争力を維持する動きも見られています。データの収集関連の規制は緩やかで、自由に新たなサービスを創出できる環境がありますが、近年はプライバシー侵害や AI の悪用などへの懸念が世界的に高まりつつあるのを受け、 企業自らデータや AI の適正な活用方針を打ち出す動きも出てきています。

中国では、国家主導の DX が進んでいるようです。
政策的な下支えも受けて、巨大なテク ノロジー企業が大規模にデータを収集して急成長を遂げていますが、監視社会となる懸念も大きいと言われています。

欧州では、ドイツが「Industry 4.0」を掲げて製造業の高度化など各国で強みを持つ分野を中心に DX が推進されています。
欧州全体としては、「欧州データ戦略」 などでデータによる変革を促進し、デジタル市場の構築などを進めています。
このように、 各国で特徴をもった DX が展開されています。
5. 日本における DX
海外の DX 事情についてご紹介しましたが、それらを踏まえ、日本ではどのように DX を展開していくのが良いのでしょうか。

これについては、すなわち日本国内に閉じた発想(オールジャパン)ではなく、グローバルな展開を大前提として進めることが必要であるとされています。
日本の特徴としては、産業の裾野が広くその社会への応用やエコシステムを構築してきた歴史がありますが、自社グループや系列企業内での進化ばかりで、社会全体として見れば個別で展開されているに過ぎないと言えます。
しかも、少子高齢化による人口減少、労働力の不足などの課題が山積しており、こうした産業構造は持続不可能なものとなりつつあります。
こうしたこともあり、日本としては、国内にターゲットを絞ってしまうのでなく、グローバルに DX を展開して外需を取り込むことが鍵となりそうです。
6. 産業構造の転換
DX によって社会の構造は大きく変わるとみられていますが、それには既存の産業の保身を前提にせず、破壊を伴う新たな産業の創出を前提にする覚悟が必要です。
それにはスタートアップ企業の大きな振興が期待されています。
スタートアップ企業は、社会課題の解決や価値創造に向けたビジョンの明確性、その実現に向けたアイデアや熱量という点で、優れた特徴をもっています。それには若い世代の価値観も重要であり、小中学生からの教育プログラムの拡充や、大学等との連携も確保する必要があります。

前述のこともあり、スタートアップ企業の振興には相当な時間を要するかもしれません。
既存の業種別の「〇〇業」という縦割りの区分けに基づく発想から脱却し、生活者の価値に基づいて産業を再編成していく必要があるからです。
7. まとめ
既存の社会に DX という概念を導入するには、今まであったものにただ DX を上乗せするだけではなく、産業の構造そのものを改革していくという志が大切だということが分かりました。
生活者の多様な価値観に寄り添い、その一つひとつのニーズを適切に読み取ることができる企業だけが成功を収めることのできる社会もそう遠くないのかもしれません。

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